第9章 虹の欠片
部屋の中…
テレビからは、お姉さんの艶めかしい声…
…あいつ……
ベッドに凭れて横を向いていたから、
手元までは良く見えないけど、
これは明らかに……
全く~///
ドアには鍵かけて、ヘッドフォンしてヤレよ、
って…
今度注意してとかなきゃだな。
まあ、健全と言えば健全なんだろうから、
邪魔しちゃ悪いと思って、
俺はそのまま帰ろうとした。
でも…さっき、俺のこと呼んでたよな?
俺が来たって分かってたのかな??
首を傾げつつも、そっとドアを閉めたその瞬間、
「…ぁ…しょお、くん…」
………
嘘……だろ…?…
俺は固まった。
そう…
智くんは、ひとりでシながら、
俺を…俺のことを思い出してるんだ。
……前々から…
智くんが俺を嫌いじゃなく、
寧ろ好意的に思っていることは分かっていた。
それが幼馴染以上の気持ちだってことも…
だけど、俺と潤の事を理解して、
応援もしてくれていたし…
何よりも、俺には潤がいたから、
彼の気持ちには、気付いても、
どうしてあげることも出来ないから…
だから、智くんの気持ちには、
申し訳ないけど、気付かない振りを決め込んで、
そのまま忘れてくれるのを待つしかないって、
そう思っていた。
だけど……
こんな彼を知ってしまった俺は、
どうしたらいいんだろう……
答えなんか出るはずもない…
見てはいけない…
見なきゃよかった…
俺は音を立てずに、
そっと智くんの部屋のドアを閉めて、
静かに階段を下りた。