第9章 虹の欠片
そんな智くんの気持ちに気付いたのは、
潤と付き合って1年が過ぎた頃だった。
智くんは大学生になっていて、
俺も一応受験生だった。
エスカレーター式に大学まで行けるとはいえ、
成績があまりに悪いと上がれないし、
行きたい学部に行くには、
それなりに勉強しないと無理だったんだ。
だから、潤とも少しだけ会うのを控えるようにもなっていた。
潤は、俺を応援するから!と、
『会いたい』と我儘言う事もしなくなり、
毎日、簡単な日記みたいなLINEが届くのが日課だった。
そんなある日、
それでもほったらかし過ぎだし、
俺も会いたかったし、まあ、溜まってるもんもあったし///
とにかく。
潤には内緒でこっそり会いに行った。
黙って上がり込んでも平気な関係だったから、
まあ、それでも一応玄関で「お邪魔しま~す」
と声を掛け、リビングに…
「あれ?誰もいないのか…じゃ、部屋かな?」
夜の8時を回ったばかりで、
まだ寝るには早いから、
潤も、てっきり部屋で漫画でも読んでるんだろうな…
そう思って、音を立てずに階段を上がっていった。
ビックリさせてやりたくて…
やってることは、泥棒みたいだけどね。
そ~っと潤の部屋のドアを開けると、
残念ながら主は留守だった。
下にも人の気配がしないから、
『親と出掛けてるんかな??』
それにしても、鍵くらいかけてけよ…
そう思って帰ろうとしたその時…
「…しょお…くん…」
微かに、俺を呼ぶ声が…
あれ?智くんいるんだ!!
その声は、奥の智くんの部屋から聞こえてきたんだ。
それにしても、なんか、変だな?
不思議に思った俺は、智くんの部屋の前まで行くと、
ドアが細く開いていて、
その隙間から見えたのは、驚きの光景だった。