第9章 虹の欠片
クラスの女子に告られたことは、いい切欠だった。
丁度潤が見てたしね?
『ずっと、お前の側にいるから』
『潤さ、俺のこと好きだよね?』
そう言った時の潤の顔…
ふたりでいる時に、今でも時々話題になって
潤を揶揄ったりしてるんだ。
イケメンのあんな間の抜けた顔…
滅多に見れるもんじゃないでしょ~?
「だってさ、心臓止まるかと思うくらい、
ビックリしたんだよ!
いや、実際ちょっと止まったしね!」
ムキになって拗ねる潤が、また俺のツボで
ついつい揶揄ってしまうんだ…
クルクルとよく変わる表情、
キラキラした大きな目、
キュッと結ばれた唇と、
その上にある小さな黒子…
どれをとっても潤は絵に描いたように綺麗で、
申し訳ないけど、
潤よりかわいい子には会ったことがなかった。
そんな潤が、
家族といる時は、不思議なくらいに従順で、
大人しくて…
感情を押し殺しているような…
本来ならば、一番自分を出してもいい場所で、
潤は一番、自分を偽っているように見えた。
そして、そんな潤に、兄である智くんも、
当然気付いていた。
生まれた時から見ているんだもん。
それは分かるだろうな~…
「それは潤が好きだから…」
潤がいないときに、俺の家で母さんが出してくれたプリンを、潤に持って帰るって言うんだ。
「いいって。黙ってりゃ分かんないんだから!
智くんが食っちゃえよ~」
「僕はいいから、潤にあげたいんだ…」
頑なな智くんの態度に、
俺は子どもながらに違和感を感じた。