第9章 虹の欠片
「ふえっ??」
一番先に変な声を出したのは俺だった。
ゆうちゃんがゆっくりと俺を見た。
「えっ??いや、あの…」
「潤くん、ふざけてないで、ちゃんと教えてよ」
少し怒ったようなゆうちゃんの顔…
そりゃ、そうだよな…そんなことで誤魔化そうなんて…
「ふざけてないよ、本当に俺は翔くんが好きなんだ」
「…じゅん…」
今度は智くんが、間の抜けた声を出した。
「潤くん…好きって、どういう意味か知ってるの?」
「分かってるよ」
潤も真っ直ぐにゆうちゃんを見つめる。
「そう言うのさ、ホモって言うんだよ///」
ゆうちゃんは、怒ったような声を上げた。
「ふ~ん…それは知らなかった。
ゆうちゃん物知りだね~」
呑気な潤の返事に、
ゆうちゃんは唇の端をキュッと結んだ。
「ホントのホントなの?」
「ホントのホント。俺が好きなのは翔くん、
他には誰も、好きにはなんないよ」
「……分かった…もういいよ。じゃあね…」
ゆうちゃんは、帰る瞬間、一瞬だけ俺を睨んでから、走って行ってしまった。
「ごめんね?帰ろうか」
潤は、何事もなかったかのような
いつもの笑顔で俺たちを振り返った。
「潤…、さっきのさ…」
黙っている俺に代わって、智くんが聞いた。
「さっきのって?翔くんが好きだって言ったこと?」
「うん…」
すると潤は俺を真っ直ぐに見つめて言った。
「翔くんのことが好き…嘘じゃないよ?」
「…潤…」
「ほら!行こうよ~僕、お腹空いちゃった!」
「あ、待って~」
走り出す潤の後ろに、俺と智も着いて走った。
この時はそれで終わってしまったし、
ゆうちゃんも何も言いふらさなかったから、
潤の変な噂も広がらずに済んだけど…
俺は、この時の潤の真剣な目を、
ずっと忘れることはなかった。
忘れちゃいけない…そう思っていたのかもしれない…