第9章 虹の欠片
「…ゆうちゃん…」
潤にゆうちゃんと呼ばれた子は、
髪の長い可愛らしい子で、潤のクラスの子らしかった。
「潤くん、話があるの…」
そう言いながら、ゆうちゃんは俺と智くんの方に視線を送った。
……あ、そういう事か…
その視線でこれから起こることを何となく察した俺たちは、
「じゃあ、潤、先に帰ってるよ~」
そう言って、潤を置いて帰ろうとした。
すると、
「待って。一緒にいてよ」
「でも~…」
潤に手首を掴まれて、ゆうちゃんを見ると、
ゆうちゃんの目は思い切り『邪魔だ』と言っている。
「いいから!ここにいて!…いいよね?」
潤の強い目が、ゆうちゃんを見つめる。
「うん…いいけど…」
俺たちは、仕方なく、これから目の前で行われるであろう事を、見守る羽目になった。
「何?話って?」
「……私、潤くんのことが好きです!
良かったら、付き合ってください」
女の子は、意思の強そうな目でじっと潤を見て、
はっきりそう言った。
智が俺の腕を肘で突っついた。
俺は、前を見たまま小さく頷いた。
潤は、どうするんだろう…?
そもそも付き合うって、何するんだろう??
すると潤は、
「ゆうちゃん、僕は好きな人がいるから、
ゆうちゃんとは付き合えない…ごめんね」
そう言った。
マジか!?
潤に好きな人がいたなんて??
俺と智は驚いて顔を見合わせた。
「誰?潤くんの好きな人って?」
「…言わないと、ダメなの?」
「聞いたら諦めるから…」
暫くの間…まあ、20秒くらいのものだろうけど、
潤は黙って考えているみたいだったけど、
「俺が好きなのは…翔くんだから」
そうきっぱりと言い切った。