第8章 追憶の日々
それからの俺は変わった。
子どもだったから、大人の事情は分からない。
だけど……
身を守る術を知らない子どもだからこそ、
本能で、自分の居場所を必死に守ろうとしたのかもしれない。
俺は我儘を言わなくなった。
いつも笑顔で、お手伝いも一生懸命やった。
勉強も頑張ったし、
少しでも両親に褒められるように…
『いい子』になろうとした。
当然智も、俺の変化に気付いた。
「潤…どうしたの?」
「なんで?」
「いや…なんか、前と違うかな~?って思って」
「別に?そんなことないよ…」
「そうかなぁ~?」
……お前はいいよな…
別になんにもしなくてもちゃんと居場所があるんだから。
どんな悪い子だったとしても、
無条件で愛してもらえるんだから…
俺は、智とは違う。
だって、お前は母さんの本当の子どもで、
俺はそうじゃない……
そうやって、
自分を…本当の自分を押し殺して、
我慢して、
俺は毎日を過ごした。
だから、表向き、周囲には、
俺たち4人は、仲のいい親子に見えただろう。
世間的にも家族の中でも、
聞き分けのいい、明るい次男坊。
それが俺だった。
何しろ『いい子』だからね?
智とも普通以上に仲良し兄弟だった。
智も俺のことは本当の弟のように、
いや、もしかしたら、
本当の弟以上に可愛いかってくれた。
だけど。
翔くんが絡んでくると、
そういう訳にはいかない。
なぜって、それは……