• テキストサイズ

Baby blue【気象系BL】

第8章 追憶の日々



だから。
潤も知らないと思っていたんだ。

俺たちが、血の繋がった兄弟じゃないって事。

自分が愛人の子だってことも。

まだ小さかった潤には、
この家に来る前の記憶なんか、あるはずないって…

勝手にそう思っていた。


あの日までは…


俺の記憶の中の潤は、俺と違って感情をストレートに出すから、よく我儘言って叱られていた。

潤が母親に叱られるたびに、
俺はドキドキしていた。

潤のことをそんなに叱らないでよ…って…

もしかしたら、その時はそんなつもりはないと思っていたけど、俺は、
心のどこかで、潤を『可哀想な子』だって…
そう思っていたのかもしれない。


だからなのかな??

翔くんが来てからというもの、潤は俺より翔くんと居ることが多くなった。

太陽みたいに明るくて、優しい翔くんの事は、
俺もすぐに大好きになった。

俺だって、もっと翔くんと一緒に遊びたいのに、
いつも潤が側にいて、
なんだか、俺の入り込む隙がなかったんだ…


そんなある日。


翔くんが新聞屋さんが映画の券を二枚くれたから、一緒に行かないかと誘ってきた。

「「行く!!」」

俺たちは直ぐに飛びついた。

「でも、2枚しかないんだ~、だから潤か智くんか一人だけだよ」

翔くんの言葉に、俺も潤も引き下がらなかった。

俺も見たいと思っていた映画だったし、
何より、翔くんと一緒に行きたかったんだ。

「俺が翔くんと行く!」
「俺だって行きたいよ~、じゃあ、じゃんけんする?」

俺の提案に、潤は、

「いいじゃん!翔くんと俺が行っても!
智は、何でも持ってるんだから…」
そう言った。

どうしてそんなことを言ったのか…
その時は分からなかったけど、

潤の目が…

潤の目の中に、俺に対する憎しみの色を見た気がして…

「じゃあ、いいよ…俺、行かないから…」

俺は引き下がったんだ。

/ 412ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp