第5章 溢れだす気持ち
「な、なっ///なんで?」
「なんでって、智くんが一人で淋しいんじゃないかと思って、来てやったんだよ~」
一人??
…俺一人なの?
「何そんな固まってんだよ~?
ほら、飯買って来たから食おうぜ!ファミマのおばちゃんにしっかり温めて貰っちゃったんだから…」
そう言ってにっこり笑う翔くん…
すっかり忘れてたけど。
潤は今日からゼミの合宿で北海道…
で、母ちゃんは単身赴任の親父のところに行くって言ってたっけ…
ということは、今夜は俺一人…
『オレ、ヒトリ』
そこに訪れた、招かざる客。
出来れば今日は、一番会いたくなかったのに。
「智く~ん、コップ出すよ~?お茶買って来たし…
つ~か、お客さんにビールでも振る舞っちゃう?」
そう言いながら俺を振り返り、小首を傾げる翔くん。
……明るいな…無駄に明るい……
「飲みたきゃ、勝手に飲めば?」
「なんだよ~、冷たくない?折角来てやったのに!
今夜は俺と智くん、二人っきりの夜じゃん❤」
………
『フタリッキリノ、ヨル…』
翔くん…
俺を殺しに来たんだろう~?
『生殺し』ってやつ。
いやもう、息の根止めるよ、あなたのその笑顔。
翔くんは人の気も知らないで、嬉しそうにビールを冷蔵庫から出して、買って来たハンバーグ弁当を開けている。
そんな、勝手知ったるが過ぎる翔くんを、
俺は茫然と見つめたまま、バカみたいに突っ立っていた。
……そう。
俺は、翔くんが好きだった。
多分、会った時から…
ふたりが高校生の時、
潤と付き合うって聞かされてからも、ずっと…