第5章 溢れだす気持ち
「智くん、ほら、おいでって!!」
翔くんは、口をもぐもぐさせながら俺を手招きした。
俺は仕方なく彼の横に座って、翔くんが俺用にと買って来た唐揚げ弁当を開けた。
こんなチョイスも、流石翔くん…
俺が、ハンバーグよりも唐揚げって知ってる。
「かんぱ~い♪」
ニコニコの翔くんと、渋々感全開の俺との弁当ディナーが始まり…
翔くんはご機嫌だった。
饒舌に学校の事やバイトの事なんかを面白おかしく話してくれる。
その話の中に、潤の名前が出てこないことに、俺は少しホッっとしていた。
翔くんが、潤の事のろけたりしたら、俺はこの場にはいられない///そう思っていた。
『…翔くんが好きだった…』
違う……
そうじゃない…
過去形なんかじゃないんだ。
俺は、今でも…
「あ~、何か凄く強くなってきたね~」
「…そうだね…」
予報通りに、9時過ぎに降り出した雨は、どんどん激しくなり、雷まで鳴りだした。
「こりゃあ、冗談抜きで帰れないかも…」
「……」
「まあ、いっか~、帰れなくっても。智くん家なら🎵」
まあいっか、じゃないってば。
全然良くないんだよ…
……でも、気にしないで普通に寝ちゃえばいいんだ。
俺は自分の部屋で。
翔くんは下の客間…
それなら大丈夫…なはずだ…
何も起きないし、
何も変わらない…
翔くんは弟の恋人で、
俺はただの幼馴染…
そうだよね……
その時、耳をつんざく様な爆音とともに、家の電気が消えた。
「わあああああぁっ///」
俺は気が付いたら、翔くんの首にしがみ付いていた。
俺…雷、大っ嫌いなんだよ///