第23章 Gravitation~引力~
後部座席には、じゅんが作ってくれたお弁当
俺が寝ている間に、早起きして作ってくれたんだって
…いい天気になってよかった
もう春爛漫の南房総を目指して
今日はふたりで出掛けて来た
「じゅん、そんな薄着で平気なの~?」
「平気平気~!予報だと19度になるんだって!もう春だよ、春!」
燥ぐじゅんに思わず笑顔になる
館山に行きたいって言ったのは俺…
この間、テレビで観た花畑
俺が『いってみたいな…』って言ったら、じゅんが一緒に行こうって…そう誘ってくれたんだ
会社と家と、たまに夜の街で飲んで…
そんな日常から離れて、
二人っきりでゆっくりと時間を過ごしたかった
どうしても花畑がよかったわけでもないけどね
じゅんがいてくれれば、正直どこでもよかったんだ
………そう、俺にはじゅんがいてくれれば、
それだけでもう、何もいらないから…
最近……
いつからかな?
じゅんの中に、『潤』を見る様になった
もしかしたら、意識してなかっただけで、ずっと前からだったのかもしれない…
じゅんのふとした何げない日常の姿が
『潤』と重なる
表情だったり、声だったり、仕草だったり…
確かめることが怖くて黙っていたけど、
考えてみたら、『潤』がいること…
それは奇跡でも何でもない
だって、じゅんは『潤』なんだから…
Jがじゅんで、
じゅんは潤…
『潤』はもういないんだって…
それは俺のせいなんだって…
そう思うと悲しくて、悔しくて、淋しくて…
胸が押しつぶされそうだったけど
『松本潤』とまた出会って、一緒に歩くようになった
これは偶然なんかじゃない
まるで、引力に引き寄せられるかのように
誰にも変えることの出来ない…
これは、きっと『運命』……
…そう、思う
『潤……』
声に出して呼ぶだけで、
胸が押しつぶされそうに苦しくなるんだ…