第23章 Gravitation~引力~
ハンドルを握り、ご機嫌にじゅんが歌う歌は
確か…Le Coupleの『ひだまりの詩』…
「あ~なた 愛してくれ~た
す~べて…ラララ ララ ラ~ラ
ま~るで ひだまりで~した♪」
なんだよ…
途中よく分かんね~じゃん…
それでも、じゅんの声は心地よく
俺の鼓膜を優しく揺らした
「いい歌だよね?それ…」
「あ~、何ていう歌だっけ?」
「知らないで歌ってんの~?」
「うん…昔聞いたことあったな~って思って…」
……そう
俺にとって、潤はひだまりだった
温かで、優しくて、
いつも俺を包んでくれてた
一緒にいたときには気付かなかったことを、失った今になって、より鮮明に心の中に感じる
……じゅんの中にいる『潤』
確かめなくても
俺には分かるよ…
失ったと思っていた君は
今もまだ、じゅんの中にいる……
そうだろう?
そしてこうやって、俺のこと包んでくれてるんだ
それは知らないうちにやって来た春のように…
そっと…
優しく…
「…潤…」
そう呼ぶと、じゅんは一瞬俺に顔を向け、
優しく微笑んでくれた
潤……
これから先もずっと、君と一緒に生きていこう
強く激しく、俺を守って愛してくれる、J…
そして、春風みたいに俺を包んで温めてくれる潤…
ふたりと共に……この先も……
「翔!見て!花畑見えたよ~!」
じゅんの指さす方に目を向けると、
そこには一面の黄色い絨毯…
その向こうには、少し早い春をキラキラと映した青い海原が、広がっていた
「わあぁ~!」超綺麗!」
「でも俺、腹減った~、先弁当食おうぜ!」
「え~?なんだよその、ムードのない発言…」
「はあ~?だって、もう昼飯時だよ?」
「にしたってさ…」
その時、俺の腹が、大きな音を立てた
大爆笑するじゅん…
恥ずかしさを誤魔化そうと、
前見て運転しろ!って怒る俺
じゅん…潤…
こんなふうに
ずっと
いようね
俺たちさ………
【END】