第23章 Gravitation~引力~
昼間、ケーキやプリン、クッキー作りに、忙しく働いた
俺が入ってから、女性客が多くなったという麻衣さんは、俺を多めにレジにも立たせた
お陰で、夕方にはもうへとへとで…
だけど、コンサルに努めていた時とは全く別の疲労感は、寧ろ清々しくもあった
「じゅんくん、今日は上がっていいわよ~」
「とか何とか言って、ほのかを迎えに行かそうとしてるんでしょ?」
「あれ?バレた~?」
「バレバレです!」
そうは言っても、ほのかの嬉しそうな顔を見るのも嫌いじゃないしな…
保育園に着くと、ほのかが俺を見つけて嬉しそうに手を振りながら駆け寄って来た
「じゅ~ん!お迎えにも来てくれたの?」
「まあね~、ほのかが先生に叱られて泣いてるとこ見ちゃおうと思ってね~♪」
「…ほの、泣いてないもん…」
「どうかな~?」
「こんにちは~松本さん」
ほのかの担任の先生がニコニコ声をかけてきた
「あ、ありがとうございました~」
「良かったね~、ほのかちゃん、カバン持っておいで~」
「は~い!」
駆け出すほのかの背中を見ていると、先生が、
「今日ほのかちゃん、『じゅんには顔と心の綺麗な大切な人がいるんだって…』って…ちょっとしょんぼりしてたんですよ」
そう耳打ちしてくれた
あいつ、先生にそんな事…
「まだ5歳だけど、松本さんが思ってるよりもずっと、女の子は進んでるんですよ~…ホントに好きだったんでしょうね」
「ホントに…って、言われてもね~」
「幸せですね!お相手の方は…ふふふっ」
「いや、そんなことは…」
「じゅん、お待たせ!先生、さようなら!」
ほのかの小さな手を握って、俺は園庭を出た