第23章 Gravitation~引力~
外資系の会社をスパッと辞め、
俺は町の小さな洋菓子店に勤め始めた
実は俺、小さい頃の夢が『ケーキ屋さん』だったんだ
幼稚園の卒園文集に、
『大きくなったらケーキ屋さんになりたいです』
そう書いて、クラスのあやかちゃんに馬鹿にされたんだ
…今まで執念深く覚えてるのも、どうかと思うけど…
「じゅんくん、ケーキ屋さんになりたいの~?それって、女の子がなるんだよ~?じゅんくんって、オカマなの?」
って……
その頃、身体も小さくてヒョロヒョロで、女の子と間違われることがよくあったけど、
あやかちゃんの一言に、結構傷付いたんだ
『ケーキ屋さんって、男がなっちゃダメなんだ…』
そう思って悲しかったっけ…
そういえば…そのことを母さんに話したんだ、俺…
そしたら、母さん、
『そんなこないよ!有名なケーキ屋さんはね、男の人の方がずっと多いんだから…じゅんがケーキ屋さんになったら、ママ、毎日買いに行っちゃう♪』
そういって笑ってくれた
あの時…凄く嬉しかったんだ…
今になって思い出したよ…
「何笑ってんの~?」
店長の麻衣さんが、ホイッパーを洗いながら俺を見ている
「え?いや…今朝、ほのかに言われたことを思い出してたんですよ~」
「ふふふ、ほの、じゅんくんのこと大好きだからね~♪」
俺は、今朝の自転車のやり取りを、麻衣さんに話した
「そっか~、ほのかそんなこと言ったんだ…」
「今時の5歳児には、びっくりですよね~」
「ほの、結構本気だったのかもよ」
「えっ?」
麻衣さんは、少しお道化たように笑って見せた