第23章 Gravitation~引力~
「翔から、連絡して欲しかったんだ」
……
実家に、連絡先を聞いたくせに、そっちこそ連絡してこなかったじゃん…
そう反論するよりほんの僅か早く、Jにそう言われてしまい、俺は黙り込んだ
「……なんてな~、ホントは怖かったんだよ…
もう、あの頃の翔じゃないんだって分かることが…
別の人と、別の人生を歩き始めてるんじゃないか?
そう思ったら、俺なんかが今更翔の前に現れていい訳ないんだ…って…そう思ったら…」
「そんなこと!」
思いがけず大きな声で反論してしまったら、Jにじっと見つめられて、急に恥ずかしくなった
そんなにムキになることでもなかったか…
「…翔…俺はずっと後悔してた…」
「…J…」
「潤がいなくなるのに、俺だけが翔と一緒に…なんて、そんなこと許されないって…そう思ってたから…
もう2度と、翔に会うことも無いって…会っちゃいけないんだって、そう心に決めてロンドンへと発った…
だけど…」
そこまで言って、Jが大きなくしゃみをした
そういえば、彼はあれからずっとここにいたのかな?
「J…風邪引いちゃうよ!」
思わず手を握ると、それは氷のように冷たくて…
「こんなに冷えて…」
「翔!!」
不意にJに手を引かれて、俺はそのまま彼の胸の中に引き込まれた
……コートもすっかり冷たくて…
こんなとこにいつまでもいたら、ホントに熱出して…
「翔…」
抱き締めた腕を緩めて、Jの頬が近付いてくる…
……キス、される…
………ダメダメッ!!
「J、場所変えよう!!どっか、もっと温かいところに行かなきゃ!」
「なんだよ~…ムードない…フェックシッ///」
「ほら!行くよ~話はそこで聞くからさ!!」
「はいはい、お母さん♪」
「お母さんじゃないし!…もう何でもいいから~!」
俺はJの氷のような手を引っ張って、さっき下りた階段を駆け上がった