第23章 Gravitation~引力~
……………
人気のない深夜の公園
水面に映るビルの明かりが
キラキラと揺れる
大都会のど真ん中
そこだけがぽっかりと
忘れ去られたような静寂を纏い
まるで時が止まったかのようにひっそりと
その人を抱いていた
ゆっくりと
一歩一歩、彼に近付いていく
さっきまでの不安もドキドキも
今はもうない
「翔」
振り返ったJが、優しく笑う
「……」
俺に向かって伸ばされた右手に
素直に飛び込めない自分
そんな俺の気持ちを分かってくれているのか
Jは、視線を空へと向けた
「寒いけど、綺麗な下弦の月だね…」
「かげん、の?」
「そう、下弦の月…聞いたことあるだろう?
半月の形が弓のように見えるだろう~?」
「そう言えば、Jってどうしてそんなに月に詳しいの?俺、恥ずかしいけど、そっちはさっぱり…」
「卒論でさ『人類月植民地計画の利点と欠点』っていうのやったんだ~」
卒論か…
急に俺の前に現れたJが、普通の大学生のように卒論を語ったことが、なんだか妙に嬉しくて…
「そ、そうだったんだ…俺はてっきり、Jの形をした宇宙からの侵略者なのかと思って…」
「侵略者~?なんだよ、それ…今時そんなの映画だって流行らないぜ~?」
「ははは、そうだよな~…」
笑う俺に、Jは、
「…だから、連絡くれなかったの?」
そう言った
……J…
急に真顔になるから、俺は解れかけてた緊張が、また背中を駆け上って来るような気がした
「……待ってたのに…翔が電話くれるの…」
……だって///
そんなこと言うなら、Jだって…
俺は、反論すべく、大きく息を吸い込んだ