第23章 Gravitation~引力~
「はっしりだせぇ〜♪走り出せぇ〜♪」
風磨と増田が、振り付きで楽しそうに歌う
俺は、そのアイドルグループのポップなサウンドに合わせてマラカスを振ったが、気持ちは別のところにあって…
何であの店に、Jが来たんだ?
アメリカに帰ったはずじゃ?
ああ、そうか…
アメリアと帰ったって思っていたのは俺の推測だった
だったら、あの場に彼女はいたのか?
見た限りはいなかった…
同じ位のスーツの男性たちと一緒に…
会社の同僚なのかな?
………ということは…
落ち着け!よく考えろ!櫻井翔
Jは言ってた
『ずっと待ってた』って…
俺から連絡があるのを…
名刺の裏の携帯に、俺が……
俺からかけてくるのを…
俺と連絡取りたいなら、Jの方から…
ああ、電話番号変わったんだ、俺
でも、そうしたら実家の方に聞いたって…
……まさか…
「あ、兄貴、どこ行くんですか~?」
「トイレだろ~?いちいち行くなよ、お前…」
「はあ~?なんだよ、お前に聞いてね~し///」
言い争う後輩たち…いつもならば『まあまあ』と割って入るところだけど、俺は急いでいた
部屋を出て、直ぐに電話をかけた
『あ、もしもし、翔~、どうしたの?』
「あのさ、母さん、最近J…潤から連絡あった?」
『あ~、あったわよ、懐かしかったわ~』
「で?…潤はなんて?」
『翔の電話番号を知りたいっていうから教えたけど…かかってこなかった~?』
……知ってたんだ…
Jは俺の番号、知ってた
知ってて電話して来なかったんだ…
なんだ…やっぱりそういうことか
Jは…もう……
『ずっと待ってたのに』
J……
どうして…?