第23章 Gravitation~引力~
それから、俺はJとの再会を忘れていた
正確には忘れようと努力し、その努力は報われようとしていた
あれから、一週間…
Jだって、俺と会ったことなんかとっくに忘れてるはずだ
ボストンの住所が書いてあった名刺…
日本での仕事を終えて、戻ってるかも知れない
あの女性…アメリアと一緒に…
「兄貴~、これから飲みに行きませんか?」
風磨に話しかけられ、時計を見ると8時を過ぎていた
「あ~、そうだな…どうしよっか…」
「行きましょうよ!!この頃兄貴、元気がないってみんな言ってるんですよ~?
旨いもん食べれば、元気出ますって!」
そう言いながら、風磨は携帯を出してLINEしている
俺のポケットの中でも震えているところを見ると、グループLINEに連絡しているんだろう
課を越え、風磨が言い出しっぺで集めたメンバーが数名、その名も『兄貴会』…俺を慕ってくれている後輩連中をまとめたグループで、時々飲みに行っている
ありがたいけどさ、『兄貴会』ってどうなんだろう…?
とは思うけどね…
30分後、俺たちは西麻布の洋風居酒屋で乾杯していた
風磨の行動力にはいつもながら感服する
「兄貴~、久しぶりじゃないですか?」
「そうですよ!週一くらいで招集してくんないと」
「俺今日、たまたまチーフに叱られちゃったんで~、慰めてくださいよぉ~」
「お前の場合、たまたまじゃね~だろ?」
「酷いですよ~!」
いつものメンバーに囲まれ、俺も自然と笑顔になる
考えてみたら、Jと再会してから、頭の中から追い出そうって…無理矢理仕事に没頭してたのかも…
和気あいあい、個室での飲み会は盛り上がり、俺も久々に心から楽しくて、声を上げて笑った