第23章 Gravitation~引力~
暫くの間、Jが座っていたベンチに腰を下ろし、十六夜の輝く空を眺めていたけど、
「…なんで、会ったんだろ…」
そう呟くと、また涙が滲んだ
さっきまでJが寝ていたはずなのに、その表面は、もう冷えていて、Jがそこに居たことが真実だという証にはならない
劇的な再会を果たし、恋人たちは再び……
っていう、少女漫画みたいなHappy Endかと思わせといて、やっぱり王子様にはもう既に別の人がいました
なんて…
そりゃ、王子様に再会したのが男の俺じゃ…
土台無理な話なのかもしれないな…
だったら、そんな結末なら、
いっそのこと会わない方が、
再会しないままの方がよかった…
あれから、二人の間に流れた時間の長さを思い知らされ、二人の距離を改めて知った…
J……
……だけど…元気そうでよかった…
…アメリア…って言ったっけ?
綺麗な女性だった
ふたりで並んでいると、
映画のワンシーンを観てるようで……
……そうだよ…
Jは、普通の世界に戻って行っただけ…
種の保存のためには、ごく自然の流れだ
元々俺との関係方が、世間ではアウェイなんだ
…………はあぁ~…
ため息を大きく吐くと、月を見あげて立ち上がった
「十六夜…か…J…何であんなに月に詳しかったんだろう…?もしかして、宇宙人だったりして…」
そう言った俺の、乾いた笑い声が、夜の闇に吸い込まれていった
「帰ろう…」
立ち上がって歩き出した俺は、寒さを凌ぐため、ポケットに手を入れた
するとそこに、さっきまで無かった紙片が…
Jが俺に渡していったやつだ…