第23章 Gravitation~引力~
しばらくの間、Jの胸で泣き続けた
何が起きたのか、
夢でも見ているのか、
なんだか訳が分からなかったけど
驚きと、嬉しい気持ちと、
いろんな気持ちが一気に涙になって流れ出ているような……そんな感じで…
人生の中で、こんなに泣いたのは、
生まれて初めてだった
「……翔…」
耳元でJが囁く
『落ち着け』という響きを含んだその声に、気がつくと、近くを二人連れが通りすぎるのが分かった
分かったけど…
慌てて離れるのもなんだし、
でも、いい年した男が、
いい年した男にしがみついて、
わーわーと泣き続けるというのも、どうかと思い、泣くのをやめ、そのままJの胸には居座らせてもらった
二人連れは、男女なのかな?
俺たちには気付かないような素振りで、
普通に話ながら通りすぎた
訳ありカップルを気遣ってくれたのは明らかで……俺は急に恥ずかしくなった
………どうしよう……
今更だけど、どんな顔して
Jを見ればいいんだよ
固まったまま動かない俺の肩を、
Jがそっと押して離そうとする
俺は、恥ずかしさと、涙でぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて、
Jの力に抵抗し、ますます胸に顔を押し付けた
「翔……顔、見せてよ」
「やだ」
「どうして?」
「どうしても」
「……どんないい男になったのか、よく見たいんだ」
「いい男になんか、なってないし…」
「いいから。ちょっと俺のこと、見てよ」
「見ない!」
…………
しばし沈黙が流れた後、
Jが大声で笑い出した