第23章 Gravitation~引力~
俺一人だと思ってたのに、人がいたなんて///
恥ずかしい…独り言、聞かれちゃったかな?
その場から、さっさと逃げてしまおうかと思ったけど、
どう考えてもさっきのは俺に言った言葉、だよな~?
なら、このままいなくなるのは失礼か…
それなら……えっと、どうしよう…?
「すみません…人がいるの知らなくて、ひとりで喋ってて…変ですよね~」
「……」
……あれっ?寝てる?
この寒空に?
変な人…だったりして?
それとも、路上生活者…とか?
こんな時間に、こんなとこで横になってるのも、考えてみたらおかしいよな~?
でも……
いくら暖冬でも、ここで寝てたら、確実に凍死するし。
それならそれで、起こしてあげた方がいいよな~
怪しい人だったら、逃げられる距離を保ったまま、俺は極力明るく話しかけた
「…あの~、さっき、何て言ったんですか~?」
…………
何も応えず、動かないその人に、もう一歩だけ近付いてみた
……死んでる…訳じゃない、よな?
その時
「……十六夜…」
え……?
「満月っていうのは、十五夜のことで、今日はその1日後の月…十六の夜と書いて、『十六夜』っていうんだよ…」
うそだ……
「他にも、『既望(きぼう)』とか『不知夜月(いざよいづき)』…なんて言い方もあるんだ…」
そんな、バカなっ…
「…既望は望月を過ぎた月、不知夜月は一晩中月が出ているので『夜を知らない』っていう意味らしいよ…」
………まさか…?
その人は、ゆっくりと身体を起こして立ち上がった
一歩、俺の方へと歩みを進めたせいで、満月の…いや、十六夜の微かな明かりが、その頬を照らした