• テキストサイズ

Baby blue【気象系BL】

第23章 Gravitation~引力~




月の影を追うように歩くと、川沿いの公園に出た

真冬にしては暖かい夜だった

それでも、時折川面を渡って来る夜風は冬のそれで…

俺はコートの襟を立て、その中に顔を埋めた


「こんなとこ、初めて来た…会社とマンションの往復だけだからな~…たまには寄り道もいいか…」

そうひとり呟き、川沿いの公園を月を見ながらゆっくり歩いた



……どうしているかな…あいつ…

長く続く柵に掴まり、小さく息を吐いた


思い出さないようにしていた人の顔を、
満月に重ねてみる


「こんな丸顔じゃないけど、顔色はこんなだったかも。夏でも白い顔してたもんな~…ふふっ」


…………


「……元気、かな…」


そう呟くと、思わず鼻の奥がツーンとなった

そんな自分に、自然と笑みが浮かぶ

まだ、こんな気持ちになる自分に呆れる気持ちと、何年たっても俺の中に大きく居座り続けるあいつを、恨めしくも思う


「…俺も、大概にしないと…」


都会のど真ん中にあって、静かに流れる川沿いの公園は、夜とはいえ、まるで世の中から忘れ去られたかのようにひっそりとしていた


なんだか、俺みたいだな…


そう思うと、ちょっと笑えて…
そして少し、悲しくなった


暫くの間、柵に凭れて僅かに揺らめく水面を眺めていた俺は、手も冷たくなったし、そろそろ帰ろうかと、もう一度大きく空を仰いだ


「ああ…それにしても、綺麗な満月だよな~…」



「…十六夜(いざよい)…」


えっ??


どこから声がしたのか、一瞬分らなくてキョロキョロして見ると、少し離れたベンチに、人影が見えた

寝転んでいるから、分からなかったんだ


/ 412ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp