第23章 Gravitation~引力~
月の影を追うように歩くと、川沿いの公園に出た
真冬にしては暖かい夜だった
それでも、時折川面を渡って来る夜風は冬のそれで…
俺はコートの襟を立て、その中に顔を埋めた
「こんなとこ、初めて来た…会社とマンションの往復だけだからな~…たまには寄り道もいいか…」
そうひとり呟き、川沿いの公園を月を見ながらゆっくり歩いた
……どうしているかな…あいつ…
長く続く柵に掴まり、小さく息を吐いた
思い出さないようにしていた人の顔を、
満月に重ねてみる
「こんな丸顔じゃないけど、顔色はこんなだったかも。夏でも白い顔してたもんな~…ふふっ」
…………
「……元気、かな…」
そう呟くと、思わず鼻の奥がツーンとなった
そんな自分に、自然と笑みが浮かぶ
まだ、こんな気持ちになる自分に呆れる気持ちと、何年たっても俺の中に大きく居座り続けるあいつを、恨めしくも思う
「…俺も、大概にしないと…」
都会のど真ん中にあって、静かに流れる川沿いの公園は、夜とはいえ、まるで世の中から忘れ去られたかのようにひっそりとしていた
なんだか、俺みたいだな…
そう思うと、ちょっと笑えて…
そして少し、悲しくなった
暫くの間、柵に凭れて僅かに揺らめく水面を眺めていた俺は、手も冷たくなったし、そろそろ帰ろうかと、もう一度大きく空を仰いだ
「ああ…それにしても、綺麗な満月だよな~…」
「…十六夜(いざよい)…」
えっ??
どこから声がしたのか、一瞬分らなくてキョロキョロして見ると、少し離れたベンチに、人影が見えた
寝転んでいるから、分からなかったんだ