第5章 溢れだす気持ち
ダメなんだよ…
翔くんだけは…いや、そうじゃない。
潤の恋人にだけは、俺は手を出せないんだ。
それが例え誰であっても。
潤のものは…俺が触れちゃいけない…
それまでと違って、がっくりと肩を落とす俺に、
「お前さ~、隠してたつもり?」
「隠してたとか…そんなんじゃ、ね~し…」
「認めたくないのか、自分でも気づいてないのかもしれないけどさ~、漏れ漏れだよ?」
「漏れ…えっ??」
岡田の顔をじっと見つめた。
すると彼は、俺の肩を抱き寄せ、内緒話でもするように耳元に口を寄せた。
「大野の、翔くんを見る目がさ…好きだ、って言っちゃってるんだよ〜…自分で気づいてないから質が悪いんだ…」
「嘘だ!」
「ほ~らな…多分さ…いや、絶対だな。
お前の可愛い潤くんも、気付いてるよ~?」
……潤が…?
潤が、……まさか??
そんなこと…ある訳…ない…
俺は必死に…あっ…
俺は、潤の射るような冷たい視線を思い出した。
あれは…俺を見るあの目は…
そういう事だったの??
黙り込む俺に、岡田は、
「どうすんだよ?潤から取っちゃう?」
「そ、そんなこと///」
出来る訳ないよ。
潤から…翔くんを…
そんなの、無理だ。
「でもさ…ぶつかるだけぶつかってみればいいじゃん!翔くんはダメでも、そこから先に進むなら、一回越えなきゃいけない壁だと思うぜ~?俺は…」
「…勝手な事…いいやがってさ…」
俯く俺を尻目に、岡田は冷蔵庫から新しいハイボールの缶を2本持ってきて、その1本を俺にくれた。
……岡田の言葉に、なんだかもう、頭の中がごちゃごちゃで…
俺は目をぎゅっと瞑って、ハイボールを煽った。