第5章 溢れだす気持ち
「大野智は、弟の恋人が好き…だろ?」
………返事のかわりに、俺の喉が盛大にゴクリと鳴った。
言葉が出ない。
岡田の鋭い目が、俺の心のその奥までも射貫く…
俺はただ、蛇に睨まれた蛙…
いやもう実際、半分飲み込まれてんじゃね~か?
「ははは、分かりやすっ///」
「はあ~?…意味解んね~し…俺、やっぱ、帰るわ」
目を反らせて立ち上がろうとした俺の腕を、岡田が掴んで引き戻した。
「…は、離せよ…」
「や~だ♪…聞いてやるって…俺、誰にも言わないよ~?口が堅いって、有名なんだから~」
「……言わない、って、言われても…」
諦めて、俺はまたそこにぺたりと座った。
「可愛い弟、潤の恋人…まあ、大野にだって大事な幼馴染であることに変わりはない…」
…やめろよ…
「だけど、溢れ出す気持ちが抑えきれない…」
…よせっ…
「いけないって思えば思う程、どうしても気持ちがそっちに行ってしまう」
……もう言わないでくれ///
「大好きな翔くんが…」
「やめろ!!…勝手なこと言うなよ…何にも知らないくせに…」
最大級に怒っているのに、岡田はそんな俺を見て、ニヤニヤいやらしく笑う…
こいつ、マジでムカつく///
「大野…好きならさ、取っちゃえよ」
「ふぇっ??」
驚いて、変な擬音しか出なかった俺に、岡田はグッと顔を近付けて続けた。
「先着順じゃないよ…兄弟だって、そこはシビアでいいんだよ」
……岡田は、そう言って俺の肩に手を乗せた。
俺はお前の味方だぞ!
そう言っているかのように…
心強いよ、こんなマッチョの味方。
だけどさ……