第22章 forget me not~忘れないで~
…………どのくらい時間がたったんだろう
ほんの10分かもしれないし、
一時間なのかもしれない…
部屋の中には、翔の嗚咽だけが響いている
俺はそんな翔を見ていたくなくて、
胸が張り裂けそうなほど、悲しいのに、
どうすることも出来ない……
身体は鉛よりも重く、
足には、根が生えたように
その場から1㎜も動けなかった……
肩を震わせる翔を、抱き締めるための腕は
俺には、もう……
………えっ!?
徐に、翔がシャツのボタンを外し始めた
「…しょう…何、してるんだ…?」
「………」
俺の掠れた声が聞こえないかの様に、翔は、着ているものを脱いでいく…
「…止めろ…しょう…」
「……」
「翔!頼むか…」
「抱いて…」
翔……俺は…
「…最後に……これで最後だって言うんなら…最後に俺のことを…」
「できない…」
「お願いだから!」
翔…
「どんなに俺が頼んでも、Jの気持ちが変わらないんなら…最後に…俺の身体に、Jの証を刻んで欲しい…
Jのこと、俺が忘れないように
Jが、俺のこと、忘れないよう…あっ…」
堪らず、翔の腕を引いて、胸の中に閉じ込めた
…忘れるはずなんかない…
忘れられないから…
離れられないから…
強く愛しているから…
だから、翔と別れる……
一緒にいることが出来ない…
たとえ、心が壊れてしまいそうなほどに、
悲しくても……
泣きじゃくる翔の顎を掴んで上向かせ、
強引にその唇を奪った
……涙の、味がした…
…翔、愛してる…
誰よりも…