第22章 forget me not~忘れないで~
「J…俺のことが…嫌いになったの…?」
翔……
「俺はずっと、何があっても、Jの側で、
潤の側で、守るって決めたんだ……だけど、Jはそうじゃないの?」
翔がまっすぐに俺を見つめる
曇りのない、澄んだ瞳で…
「…そんなこと…あるわけ、ない」
「だったら」
「俺だけが…俺だけが、翔と幸せになって…いい筈ない」
……そんな、泣きそうな顔して、俺を見るな…翔…
「潤を生んだのは、俺のエゴだ…俺の弱さのせいで、潤は勝手に生み出され……
そして、勝手に、消される…」
自分で初めて、その事実を口にして
声が震えるのが分かった
翔は、何も言わず俺の言葉を聞いている
………潤は、しなくてもよかった絶望を、
俺のせいで味わうことになる
しかもそれは、『終わり』を意味する
潤というひとりの人格が、そこで終わる…
それは、潤が…
潤が死ぬことを意味するんだ…
俺が……
俺がもっと強かったなら
俺が、自分の弱さに打ち勝つことができていたなら
潤は、こんな悲しみを知らずに済んだのに……
俺には分かるんだ
潤の絶望が…
潤の苦しみが…
そして、
狂おしいほどの、翔への熱い思いが…
潤は俺の、謂わば分身なんだから…
………潤、お前だけを悲しませたりしない
お前の絶望を、俺も……
俺も引き受けるから…
だから……
「翔……俺たちは、一緒にいることは、許されないんだ…
だから…
だから、俺と別れてくれ…」
………翔は、何も言わず、唇をかみしめたまま
大粒の涙を、ぽろぽろと溢した
翔……
しょう……
お前を抱きしめたい
本当は今すぐに、
折れるほどに……
でも…それは、
許されることじゃない…