第22章 forget me not~忘れないで~
薄暗い部屋の中、
加湿器の淡い紫色の灯りだけがベッドで眠る人影を浮かび上がらせていた
「……J…」
「……」
俺の呼びかけにも、ベッドの上の人影は、ピクリとも動かない
「どうして、俺を避けるの?」
「……」
「Asteriskで、待ってたのに…」
「……」
「…J…」
「…」
涙が溢れて来た
Jの心が、遠く感じる
「…俺じゃ、Jの心に寄り添うこと、出来ないって…分かってるけど…分かっていても、側に居たいのに…
苦しさを、悲しみを、
少しでも俺に分けて欲しいって…そう思っていたんだ…でも…
Jはそうじゃなかったんだね…俺のことなんか、Jは…」
不意に大きく布団が跳ね、
飛び出して来たJが俺を乱暴に抱き締めた
「…J……」
「……どうして来たんだよ…」
「だって…」
「俺の気も知らないで…」
J……
「もう…時間がないんだ…だんだんと、コントロールできなくなってる…潤でいる時間は…もう、残り少ない…」
「J…」
Jは俺の肩に顔を埋めて、静かに言った
「翔…」
「潤が潤でいる間に、あいつを……
潤をしっかり受け止めてやって欲しい…」
「…受け止めてるよ、ちゃんと愛してる!でも、Jだけじゃない…潤も俺の横に、いないじゃん…」
そう言って気付いた
会いたくても連絡さえとれないときは、
潤じゃなくて、Jのとき。
その時間がどんどん加速的に増えているから、Jは俺の前から、姿を隠した
……そんなに……
もうそんなに長い時間、Jが身体を……
だから、潤は俺が抱くと泣くんだ
「J…それでも…こんなことしないで…」
「翔……」
「俺の前から、逃げたりしないで」
潤が潤であるのが、あと僅かならなおさら…
俺はふたりの側にいたいと願うんだ
「J、逃げないで。
俺と一緒にいて欲しい…一人でいるJなんて、見たくないよ…」
そうだよ、
こんなのJじゃない