第22章 forget me not~忘れないで~
何度か『Asterisk』を訪れたけど
Jには会えず…
「翔、Jって何やってんの?」
雅紀に聞かれても、首を振るしかできない俺…
J、どこで何をやってるんだよ?
あ……
もしかしたら、Jは、あそこに…?
俺は、机の中に仕舞った名刺を引っ張りだして、その番号に電話を掛けた
RRRR~♪RRR~…RR
「あ、もしもし…」
『翔くん?』
「はい、ご無沙汰してます」
電話の相手は、潤がJになるときに、部屋を貸してもらったり、いつもお世話になっていた弁護士の『いずみさん』
「すみません、お忙しいのに…」
『翔くん今夜来れる?』
えっ?いいのかな?
『ごめんね、ちょっと今、来客中なの…夜になったら、身体が空くから、いらっしゃい』
「…はい、伺います…」
いずみさんは、慌ただしく電話を切ってしまった
スマホの画面は17:25…
夜っていうと…いずみさんの言う夜っていつからなんだろう?
暫くして、玄関を出ようとすると、
「出掛けるの?」
と母親が声を掛けてきた
「うん…遅くなるかもしれないから」
「…そう…私にできることがあったら、言ってね」
「…ありがと。じゃ、いってきます…」
母さんも、何か感じてるんだ
俺の周りと隣の家庭で、何か大変なことが起こっているってことを…
母さんの気持ちはありがたいけど、俺だって何もできやしないのに…そう思った
今になって、Jの気持ちさえ、見えなくなってる…
家を出てから、念のために潤の携帯に連絡してみたけど、LINEはいつまでたっても既読にはならなかった
よし!行こう…
行って、Jがどうして俺を避けてるのか、ちゃんと聞かなきゃ!
マフラーをもう一度まき直し、俺は駅を目指して歩きだした