第22章 forget me not~忘れないで~
デパートで、母さんは張り切って買い物をした。
それちょっと若作りじゃないかなぁ、っていうものも、嬉しそうに試着して購入を決めた
俺たちはそれを苦笑いしながら見守った
「じゅん~、これどうかな?」
「ああ、さっきの色の方がいいと思うよ」
「そう~?じゃあ、そっちにするわ♪」
「こんなにポンポン決めるんなら、俺たち要らなくね?」
智はボソッと呟いたけど、俺は笑ってた
こんな母さんを見たのは、
初めてだって、そう思った
俺を引き取って、育てるって決めてくれた
その後になって、俺の存在に苦しんでいた
優しいけど、弱い人なんだ
今ならよく分かる
母さんの気持ち…
ひとりぼっちになってしまった俺を、
息子として迎え、育ててくれた
俺を憎んでいたかのような行動の根底には、俺の母親への罪悪感がずっとあったんだ
もう………
母さんに対して抱いていた負の気持ちは、
正直、ない
母さんも一人の女で…人間らしい感情を持っているんだって…そう理解できる…から…
「はあ~、楽しかった!」
「ちょっと買い過ぎだよ…」
「いいの!この頃全然買ってなかったんだもん」
「親父に言いつけるから」
「これは母さんのへそくりだから…」
荷物を持たされた智が、文句を言うけど、母さんは平気だ
「潤、何食べたい~?」
「俺は…智は?」
「俺は~、マックでいいや」
「マックなんて…智そう言うと思ったわ~」
結局俺たちは、デパートの上にあるレストランに行った
……覚えてる…
親父と、母さんと、智と俺…
買い物に来てここに入り、食べたのは…
「潤~、オムライスにする?好きだったよね~?」
そうだ…智はラーメン、
俺はオムライスを食べたんだった
……忘れていた4人の風景…
あれは、ちゃんと家族だった…
思い出した映像の中の俺は…
笑ってた……