第22章 forget me not~忘れないで~
「ちょっとお互い冷静になろう…」
「うん…」
「どっちにしても、お金は受取れないよ」
「…翔くん」
「ちゃんと考えるから…」
「…分かった…」
智くんと別れて家に戻った。すると、
「喧嘩…してたの?」
おふくろが、おずおずと聞いて来た
「え?…あ、いや…」
「智くんと…」
「聞こえてたの?」
内容までは解らなかったけど、言い争う声に窓を開けてみたらしい
「大丈夫だよ、心配しなくても…」
「…そう〜?」
「うん、大丈夫だから…」
そう言って部屋に行こうとする俺に、おふくろは、
「翔…、美穂さんね、潤が今になって可愛くて仕方ないって…そう言ってたわ…」
と言った。
おばさんが?
「どうして、遠ざけていたのか分からないって…
いつの間にか大きくなってたって…そんな感じだって…」
いつの間にか……
おばさんにとっては、そうなのかもしれないな…
潤に、亡き友人の面影を重ね、
自分の罪を背負い、
苦しんでいたんだ…
それが、解き放たれて、今…これから…
本当に親子になろうとしている…
潤だって。
いや、Jだって…
今まで得られなかった母親の愛情を、たっぷりと受けて生きていけるんだ
一番欲しくて、得られなかったもの…
それを、奪う権利は、俺にはない…
東山先生も言っていたじゃん
『悪い結果だとは限らない』って。
智くん……
考えても、同じだよ、きっと。
俺たちも、受け入れよう
『潤の未来』
一番近くにいるからこそ、
支えられるのは、俺たちじゃないのかな?
例え潤が逃げ出そうとしたって、
俺たちが側で、しっかりと受け止め、
抱き締めてやろうよ…
大丈夫だよ……
きっと、潤は幸せになる
そう信じてやろうよ…Jに戻ることは、
不幸な事じゃないって…
俺の中で、
やっと覚悟が出来た気がした