第22章 forget me not~忘れないで~
「あのさ。これ、使ってよ!」
「え…?」
神楽坂の神社で不思議体験をした俺たちは、言葉少なに帰路についた。
家の前まで来たところで、
智くんが、急に封筒を押し付けてきた
それはさっき、東山先生のところで、
智くんが『バイト代全部』と言って出した封筒だ
「なに?」
「これ、潤と旅行でも行ってこいよ!」
「はあ〜?何、訳分かんないこと言ってん…」
「二人でどっか行ってさ、まあ、そんなにたくさんじゃないけど…んで、帰って来なきゃいいよ!」
「…さとしくん……」
俺に、潤を連れて、駆け落ちしろって?
何を言い出すのかと思えば…
「…無理だよ」
「どうして?無理なんてことないよ…大学は、二人でどっかで暮らしたところから行けばいいし…
とにかく、家から離れれば、潤はいなくならなくて済むんでしょ?母ちゃんから離れれば、きっと…」
「智くん!!」
「……」
「…気持ちは分かった…ありがとう…一生懸命に考えてくれて」
「そんなのいいんだ///じゃあ!」
「できないよ、だって…」
だって、今までの方が異常で、潤が…Jなのかな?
まあどっちでも。
自ら、回復に向かおうとしてるんだ…
本来あるべき姿に戻ろうとしている…
そしておそらく、
その時はもうすぐそこに来てる
「俺たちがそれを止めることは、潤とJの存在そのものを、捻じ曲げてしまうことになるんだ…」
「そんな!翔くんはそれで平気なの?
潤がいなくなっても、Jがいればそれでいいって!」
「そんなわけないだろう!!」
思わず声を荒げてしまった
俺の剣幕に、興奮していた智くんも
思わず黙り込んだ
ここが外だってことも忘れていた俺たちを、
犬の散歩中のおじいさんが、遠巻きに通りすぎた