第22章 forget me not~忘れないで~
「………」
「…………」
……どうか潤が…いなくなりませんように…
そしてJも…そのままでいてくれますように…
……みんなが…幸せになれますように…
絶対絶対、お願いします!!
45円で、こんなに頼み事したら、欲張りかな
少し長めに手を合わせて顔を上げると、
智くんも丁度顔を上げたところだった
智くんは…
何を祈ったのかな?
Jのことはおそらく願っていない分、俺よりは欲張りじゃないか…
「……つよし~?」
見ると、祠の脇に座り、
俺たちふたりの参拝の様子を監視していたつよしが、
影も形も無く、消えてしまっていた
「どこ行ったのかな?」
「さあ~……」
っていうか、ホントにつよしだったのかな?
俺たちは、あの病院から真っ直ぐここに来たんだ
それより早くここに来れるなんて…
「もしかしたら、さっきの、ここの神社の守り神…だったりしてね~」
智くんは、そう言って笑った
「だってここ、稲荷神社だよ?さっきのは、どう見ても猫、だよ~?」
「だよな~…」
こういうのを『狐につままれる』っていうのかな?
さっきの猫は、元々『つよし』の姿を借りた、稲荷神社の使いだったりして…
そんな事を思いながら、智くんがおみくじを引こうというから、二人で引いた
「俺、吉だ…」
『何事もいまは変化にとむ時、どのように身を処するか目標を心の中でもう一度しっかり確かめること』
……ドキン、と心臓が跳ねた
これから起こる全てを、もしかしたら神様は承知してるんじゃないか?
そんな気がした
「中吉だって~、俺んの…」
そういう智くんの札を覗き込むと、
『初めは憂き事あれど後吉、深く歎き悲しまず、身を慎みおれば後は万事思いのままなるべし』
………
黙り込む俺たちを、真冬にしては妙に暖かい風が一陣、吹き過ぎていった