第22章 forget me not~忘れないで~
「お参りして行こうよ」
「…うん…そうだね…」
大きな鳥居をくぐって、手水舎で手を洗い、
並んで口をすすいだ
そのまま階段を上がり拝殿へ向かおうとする俺に、
「ねえ、翔くん…こっち」
智くんが、急に俺の手首を掴んで引っ張った
「何?どうしたの~?参拝するんじゃ…」
立ち止まって、智くんが指差す先を見ると…
大きくて立派な拝殿の脇を奥に行ったところに、小さな祠が見えた
「…お稲荷…さんかな?」
「あっち、いってみよ」
え…でも…
近代的で、新しい拝殿と、
小振りな祠を見比べた
朱塗りの鳥居が何本か連なったその奥に、
ひっそりと佇む小さなその祠……
智くんが、そっちをお参りしようと言った気持ちが、何となく分かった
「じゃ、行ってみよっか…」
「…うん」
俺たちは、その小さな稲荷を目指して歩いて行った
すると、
「あれ?…お前…」
「…つよし…」
鳥居の脇に、猫が座っているのに気が付いた
それは、東山先生のところにいた、あの太った猫…
さっきまで診察室に居たのに…
よく似た猫なのかとも思った
でも……
『つよし』は、ぶみゃぁ~、と鳴くと、ゆっくりと俺たちの方にむかって歩いてきて、智くんの脚に纏わりついて来た
「やっぱり、つよしだ…お前、いつの間にここまで来たんだよ~」
ぶっみゃぁ~…
「先生、心配してるんじゃないか~?」
ぶみゃぁあ~!
……智くん、つよしと会話してるよ…
それでも、智くんがつよしを抱き上げようとすると、彼は、その手をするりとすり抜けて、稲荷の祠まで行き、ちょこんとその横に座った
「お参りしろって、言ってんのかな~?」
「そう見えるよね…」
俺たちは、つよしに監視されながら、
賽銭を入れ、頭を下げて二人並んで手を合わせた