第22章 forget me not~忘れないで~
「…翔くん」
「智くん…」
東山先生は、智くんを伴って診察室に戻って来て俺を驚かせた
「一緒にいいかな?」
先生は、一応俺に伺いを立てるが、
それは最早決定事項なんでしょ?
「翔くん、泣いたの?」
「…いや、別に…」
心配顔で駆け寄る智くんに、なんだかばつが悪くて、顔を背けた
「智くんも紅茶でいいかな?
そうだ!翔くんにも、もう一回…今度はジンジャーティーを入れるよ♪」
「…あ、すみません…」
「特別だよ♪」
そう言って、東山先生は俺にウインクして見せた
「……翔くん、一人で来たの?」
「うん…智くんこそ、なんで…」
「うん、俺はさ…」
そこへ、先生がマグカップを3つ乗せたトレイを持って戻ってきた
「どうぞ。身体が温まるよ〜」
「「いただきます」」
俺たちは揃って、あつあつのジンジャーティーに口をつけた
少しずつ冷ましながら飲むと、本当に身体がほかほか熱くなった
「美味しいです…」
「そうだろう〜、冬はこれに限るよ」
「ホントに。甘くて、温っまる…」
俺たちはしばし、黙って紅茶を飲んだ
すると、徐に智くんが、
「実は俺、先生にお願いがあって来ました」
姿勢を正してそう言った
「何かな?私に出来ることなら、何なりと…」
「潤を…弟を今のままで、変えないで欲しいんです」
智くん………
「ほう……と、言うとつまり…?」
「潤が、今のまんま、変わらずに潤の身体を使えるように……いい方法とか、薬とかあったら…」
「薬ねぇ〜…」
「俺、バイト代みんな下ろしてきたんです!高くてもいいから、潤に…」
切羽詰まったような智くんに、先生は静かに首を振った
「先生!!」
「智くん、それはできないよ……」