第22章 forget me not~忘れないで~
「2日前にね、潤くんのお母さんが来たよ」
「えっ、おばさんが?」
「そう…」
なんでも、
前に来た時とは別人のように表情が柔らかくなっていたらしく、先生は、それを見ただけで、
彼女が闇から完全に抜け出たことを悟ったという
「そろそろ、翔くんが来る頃なんじゃないかって、
そう思っていたんだ…」
「ああ~…そうなんですか…
先生は何でもお見通しなんですね~」
熱い紅茶を啜ると、
胸の奥まで温かくなった気がしたのは、
紅茶のせいだけじゃないことを、俺は知っていた
誰かに、聞いて欲しかったんだ
……俺が今、吐き出したいけど吐き出せない、
大きな不安を…
俺が進むべき道を、
誰かに示唆して欲しいんだ…
『君は間違っちゃいない』と…
そう背中を押して欲しかった
それはきっと、潤でもJでも…
ましてや智くんでもなくて…
「……翔くん、辛かったでしょ?今日まで…」
「…せんせい…」
俺がここに来るということは、
長い間拗れていた問題の、解決する日が近いんだということ。
そしてそれが何を意味するか…
その結果を、
実は本人よりも恐れ、不安に感じているのは、
きっと俺なんだってこと…
先生は全てを承知していて、
俺に語るというよりも、
独り言のように、カルテに目を落としながら、優しく話してくれた
「…翔くん…」
………
「君は、間違ってはいないんだよ
これでよかったんだ…そう誰もが思う日がきっとくるから」
「……東山…先、生…」
涙が溢れて、
俺はグッと奥歯を噛みしめた