第21章 その先に見える景色
一度だけ…前に聞いてしまったことがある
その時は、俺が予定外に早く帰ってしまったのもあるんだろうけど。
今日は、違う…よな?
俺がいるのを知っていて、
『わざと…?』
…な訳ないか…
今更だし…俺に対する牽制もないだろう
………
「…あ、あっ…しょ…も…」
「…じゅん…」
二人の声が、静寂の空気を震わせて聞こえてくる
翔くんに甘え、媚びるような潤の矯声と
攻め立てるような翔くんの低音……
ゴクリッ……
自分に嫌悪感さえ覚えてしまう、熱くなる身体を止めたくて、俺は両腕で自分自身を抱き締めた
まだ信じられないし、
信じたくないんだけど
本当に、潤が身体からいなくなるとしたら
潤と翔くんに残された時間は、後どのくらいなの?
もしかして、
もしかしたら、
明日には、潤は……
自分の思考に気がついてハッとなる
俺、潤がいなくなるって認めてないはずだったじゃん!
いや、正確には認めたくないから、
奇跡を信じたいんだ
潤は潤のままだし、
俺たち家族は、これからは、潤を中心に、今までの溝を埋めながら、仲良く生きていく……
そうだよ
そうなれって、そう強く願えばきっと!
奇跡って言葉は、
そういう現象が起こるから、
人はそれを奇跡と呼ぶんだから……
だから、俺は…
「…ふっ…あ、やっ…もっ…」
…………
ああああああ!!
もうダメだ!
こんなの聞いてたら、俺…
自分の意思とは関係なく、
反応し始める忌々しい息子を押さえて
俺は親の気を引くためにリビングに行こうと、階段を音を立てて降りた
そんな俺の後ろで、
ドアが勢いよくしまった
あっ、ヤベッ///
アイツ等に聞こえちまったかな?