第21章 その先に見える景色
【智】
…………
「…ぁ…あっ…しょお…く…」
………??
いつの間に寝ちゃったんだろ…
ベッドの上で布団もかけずに眠ってた俺は、微かに聞こえてくる声で目を覚ました
始めは、外で猫でも鳴いてるんかな?
と思ったけど……
………これって……
頭の中が徐々にクリアになってきて分かった
これは、アノ声だ
湿り気を帯びた
艶を纏った『喘ぎ声』
そして、こんな時間に俺の耳に届くとしたら、その声の主は一人しかいない
……潤…
…ひとり…で??
「…じゅ…ん…」
翔くん!!
潤の甘えた声に混じって届いたのは、
翔くんの低く余裕のない声…
間違うはずない…
ふたりが、部屋で、セックスしてるんだ
ふと見上げた時計の針はまだ10時前…
こんな時間から…
しかも、俺がいるって分かってるのに
こんなことは初めてだった
潤と翔くんが、そう言う関係なのは知ってるし
潤が時々夜、翔くんのうちに出掛けていくのも気付いてた
きっと向こうの親が留守なんだろうって…
それに、今までは俺がいる時、こんなことなかったのに…
でも………
「…ぁぁっ…しょ…くん…もっとぉ…」
………潤…
部屋の壁を通して、潤の切羽詰まった声は、
確実に俺の鼓膜を刺激し、
何を言っているのかまでは分からないけど
翔くんの優しい低音も、潤の声に混じって俺に届いた
不安な潤を、翔くんが癒してるんだろう
でも、下…まだ起きてるよな?
気付きやしないとは思うけど…
仕方ないから、俺が行って母ちゃんの相手でもしててやろうかな…
そう思ってベッドから脚を下した
………
相変らず聞こえる、仔猫の鳴き声にも似た潤の声…
………俺は、あり得ないことだけど、
身体の芯が熱くなるのを感じた