第21章 その先に見える景色
「こんばんは~」
「まあ、翔くんいらっしゃい!」
「すみません、急に…」
「え~?何言ってんのよ、家は翔くんにとって別宅みたいなものでしょ?いつでも来ていいのに~」
「別宅って…」
「潤~?翔くん、来たわよ~……あれっ?いるんだけど…」
「部屋に行ってもいいですか~?」
「あ、うん、もちろんよ!
きっと寝てるんだわ~
ジュースあるから持ってって♪」
「あ、はい…」
ジュースってさ…
俺たちのこと、いつまで子どもだと思ってんだろ~?
おばさんに見えない様に笑った俺は、
手渡されたトレイを持って階段を上がった
でもホントに……
おばさん、表情が柔らかくなった
険がとれた、っていうのかな?
前にはなかったふんわりとした優しい雰囲気を纏っている…
あれで潤にも接してるんだとしたら…
いや、
実際にそうだろう
Jが言ってたのも、やっぱり間違いじゃないんだ…
ガチャリッ…
潤の部屋のドアをそっと開くと、ベッドに寝転がった潤が、こっちを向いて眠っていた
やっぱり…
音を立てない様にそっと部屋に入った俺は、
静かにドアを閉めた
トレイを机に置き、潤の寝ているベッドの下に腰を下ろした
……
静かな寝息を立てて、潤は眠っている
それにしても、無駄に長くて密集した睫毛と、特徴的な凛々しい眉毛…
相変らずだな~…
………
綺麗だ…潤…
こうして目を閉じていると、
潤なのか、Jなのか、全く分からないな~
この中に、
ふたりがいるんだ…
そう思って改めて眠る綺麗な顔を見つめる…
……見つめる……けど
そんな風には思えなくて。
潤は潤だ。
この家の、この部屋で、こうやって無防備に眠っているのは、紛れもなく、潤だ
この部屋に、
このベッドに、
Jがいる景色が、今はどうしても思い浮かばない
そのくらいに、
俺の中で潤とJは別の存在なんだ