第21章 その先に見える景色
電車の窓に、並んで立つ俺と智くんが映っている
少し眉を下げた、悲しそうな顔した智くんと、
ガラス越しに見つめ合う俺も、
きっと同じような顔してるんだろうな…
『俺が望んでこうなったわけじゃない』
行き場を無くした潤の気持ちが、
壊れてしまう前に新しい人格を生んだ…
それが、Jじゃなくて、生まれた方が潤で。
…潤がいなくなってしまうから、
もう潤を愛さないで欲しいなんて、
そんなことおばさんに言えるはずもないし。
儚げで、消えてしまいそうなJが、胸の中から消えなくて…
『賽は投げられた』
後戻りはできない……それならば…
今の俺に何が出来るんだろう?
潤は……
潤はいつまで俺の前にいてくれる?
諦めの悪い俺は、
ずっと悪足掻きを止めないでいたい
何とかして、Jと潤を…
どっちも今のままで残したいし、
どっちも、変わらずに愛したい
気が付けばもう家の前だった。
「じゃあ、また…」
「うん…」
「おやすみ~」
「うん…」
智くんと別れて、家に入ろうとすると、
「翔くん!」
智くんが俺を呼び止めた。
黙って振り返ると、智くんは、
「俺さ、どうしても信じらんないんだ///
潤が…居なくなっちゃうなんて」
「……」
「だから、俺は絶対、Jの中に、潤はいるって、そう思ってるから!!」
「さとしくん…」
「俺、実は諦め悪いんだ!こう見えて」
「ふふふ…なんだよ、それ…」
俺が笑うと、智くんも笑った。
冷えていた心に、智くんのお陰で、一陣の温かい風が吹いた
この先の風景は見えないけど、
どんな未来も、受け入れよう……
少しだけ、そんな気持ちにもなれた俺は、
智くんと別れて家路についた。