第21章 その先に見える景色
沈黙が……
永遠に感じた
誰も…
息をすることさえ忘れたように
その場に立ち尽くして固まった
……今、この瞬間が、夢ならいいのに…
いや、いっそのこと、
潤を直してやろうなんて、奢った自分なんか
初めからいなければいいのに…
そしたら、潤は……
「あるべき姿に、戻るだけだ」
Jの言葉を、頭の中で繰り返してみる
…何度も…何度も……
『あるべき姿に』
『戻るだけ』
…あるべきすがた…って…
「それってさ、潤が消えて、Jだけが残るってことだよね?そうなると、潤はどこへ行くのかな?」
智くんが、誰に言うとはなく、そう言った
それは、俺が見ない様にしていた…
考えないように蓋をしていたこと。
「智くん!智くんは、潤が…潤が……」
「居なくなっても平気なのか?って、そう言いたいの?」
「……」
智くんが俺をじっと見る
ゆらゆらしたその瞳からは、彼の真意は読み取れない
「…さと、し…くん…」
やっと搾りだした言葉は、
恥ずかしいほどに震えていた
「平気な訳…ないでしょ?」
その瞬間、智くんの目から、大粒の涙が零れ落ちた
「智くん…」
「俺にはさ、潤しかいないんだよ?Jっていう人なんか、さっき初めて会って…Jは潤じゃないって…
そう思ったよ
潤じゃない…って
翔くんはさ、いいよね?Jともちゃんと気持ちが繋がっているんだから…でも俺は……
兄貴の俺は、潤がいなくなったら…消えちゃったら…」
そこまで言って、智くんは膝に手をついて咽び泣いた
……身体が動かない…
嗚咽を堪える智くんのことを、
抱き締めてあげたいと思う俺は…
脚が鉛のように重くて
その場から動けないんだ
Jも、黙って智くんを見ている