第21章 その先に見える景色
Jの慟哭にも似た叫びが、VIPを震わせた。
J……
「………嘘、言う、なよ…」
「嘘じゃない!!」
智くんも負けじと声を荒げた。
いつも穏やかな彼が、こんな声を出したのを初めて聞いた。
「潤じゃないってさ。
俺にはどう見ても潤だよ…
淋しがり屋で、泣き虫で…
いつも俺の後ろを、智、智ってくっついてきてた潤のまんまだよ。だから、俺…」
………がっくりと項垂れて、両膝に手をついたJの、堪え切れずに漏れ出る咽び泣きが、部屋の空気を震わせる
こんな小さくて弱々しいJを見たのは、初めてだった
「…J…」
俺がJに寄り添おうとするよるり早く、
智くんは、もう一度Jの身体を抱き締めた。
今度はさっきよりもしっかりと…力強く…
「……っく……わあああぁぁ…」
Jは一回り小柄な彼の肩に顔を埋め、泣いた…
子どもの様に
声を上げて…
智くんに寄り掛かり泣くその姿は、幼い頃の潤と重なった。
「気のすむまで哭けばいい
俺はお前の兄ちゃんだから
潤の気のすむまで、こうしてるよ?
気持ち、吐き出せよ…
我慢しなくていいんだ…
全部、俺が受け止めるから」
Jが、哭いている
智くんにしがみつくいて…
智くんは、そんな潤の背中を、トントンと優しく叩いている
それはあたかも、親が子を宥めるように…
その光景が、幼い頃から俺がずっと見てきた、仲良し兄弟の姿とリンクした
……智くん
………潤
『兄弟のように育ってきた』
なんて自負していた俺だけど。
この瞬間の二人の間には、
入り込むことはできない……
そう感じていた
時間が……
戻っていく
兄弟の間にあった、小さいけど深い深い溝が、軋みながら、それを埋めていく……
そんな
気がした……