第21章 その先に見える景色
部屋の中は、いつも通り。
普通サイズのソファーと、奥にソファーベッドがある。
簡易的なバーカウンターで、Jが、
「なんか、飲む?」
と、俺たち二人に聞いてきた。
「…Jと同じで…」
俺はそう答えて、様子を伺いながらソファーに座ろうとした。
「俺は、水でいいよ」
智くんはそう言って真っ直ぐにJを見つめたまま、動かない。
Jも、コロナの瓶を一本出したところで、その視線を受け止め、黙っている。
俺が間に入って、場を和ませようとするのも、何か違う気がして。
黙って二人を見つめていた。
すると…
「潤……苦しんでいたのに、助けてやれなくて…ごめん…」
智くんは、そう言いながらJに近付くと、その身体をふんわりと抱き留めた。
……智くん………
Jは、されるがまま身体を預けていて……でも、その瞳は、何処か遠くを観ているような…
J……智くんの気持ちは、あなたに届いたの?
「……勘違いしてる、みたいだけどさ」
えっ??
智くんをゆっくりと離し、今度は見ることもなく冷蔵庫からミネラルウォーターを出した。
「はい。お水…」
「潤…」
「言っとくけど、俺は、潤じゃね〜から…」
「潤!」
「あのさ、俺とヤル気ないんなら、出てってくんない?…邪魔なんだけど!」
そう言いながら俺の肩を抱いたJ…
智くんは、驚くというよりは悲し気な眼差しで、Jを見つめていた。
……でも、俺は気付いていた…
『自分は潤じゃない』と突き放したJ…
そんなJの腕が微かに震えていること……
……J……
「俺は、潤のことが大事だよ。兄弟だからさ、当たり前だよね…でも…
J…何か変だな。
潤なのに、Jって…
でも、Jのことも大事だって思ってるよ。
潤と同じくらいに…だって俺にとっては…」
「嘘つくなよ!!」
Jの叫びが、VIProomに響き渡った。