第21章 その先に見える景色
「あの…智くん…」
「いいよ、行こうか」
不意に現れた智くんに、取り立てて驚いた様子も見せなかったJ…そればかりか、VIPに行くことを承知するなんて!
いったいJは、何考えてるんだろう…?
大騒ぎの周囲をいなしながら、Jは俺の肩を抱き、
「ほら、一緒に行くんだろ?」
そう智くんに言った。
「あ…う、うん」
そう促された智くんは、俺たちについてそそくさと席を立った。
Jに肩を抱かれながら、そっと振り返えると、雅紀は眉をひそめて俺たちを見ていた。
VIPに向かう通路で、
「ねえ、J…今日は智くんが…」
するとJは、いきなり俺の肩を押して壁に張り付かせた状態にして、唇を重ねてきた。
「…///」
驚いた俺は、そのまま受け入れるしかなくて…
智くんがどんな顔してたかなんて、考える余裕もなかった。
「…んんっ…」
一気に激しくなるキスに、頭ん中は追い付いてかない……
でも、その唇が、予想に反して優しくて、甘くて…
俺から顔の角度を変えて、首を引き寄せようとしたその時、
「んふふふ♪お盛んね❤️」
「続きは中でヤレよ〜♪」
通りすぎる二人連れの冷やかしに、ハッとして、慌ててJを押した。
声をかけた二人連れに視線を送れば、今、いたしてきました〜♪という、生臭い色香を放っていた。
「邪魔すんな〜!」
Jに言われて、その二人は、ゲラゲラと笑いながら、行ってしまった。
そこで俺は智くんのことを思い出した。
まあ、忘れてた訳でもないんだけど。
それどころじゃない、っていうか…
恐る恐る、智くんに視線を移すと、少し驚いたような、困ったような顔で突っ立っていた。
「じゃ、続きは、Webで♪なんてね〜」
ご機嫌な……
いや、ご機嫌を装っているJは、また俺の肩を抱いて、その先のドアを開けた。