第21章 その先に見える景色
【翔】
智くんが、Jに会いたいっていってきたことは、正直、想定していなかった。
でも、考えてみると、智くんが一番潤に近い存在なんだから、全く蚊帳の外というのもおかしな話だ
それに……
智くんに会ったとき…
しかも、不意に現れた兄貴に、
Jがどんな顔するのか、少しばかり興味が湧いたというのも本音だ。
「翔!ひさしぶり〜♪」
「おう」
「生きてたのかよ〜」
「何とかな〜」
中に入ると、顔見知りが声をかけてきた。
「…翔くん、有名人なんだね…」
「そんなことないよ〜、Jと一緒にいるせいだよ」
「ふ〜ん…」
そう。
ここではJほど有名なやつはいない。
俺も、Jの仲間になれなかったら、
こんな風に声を掛けてくるやつなんかいなかっただろう。
Jには、人を惹き付けて離さない、
不思議な魅力があるんだ…
いつもの、奥のシート席まで行くと、仲間たち、一緒にニノと雅紀がいて、俺に気づくと笑顔で手を上げた。
「翔!こっちこっち!」
雅紀が場所を空けてくれた。
「…そちらは?連れ?」
ニノが、俺の後ろにいる智くんに気付いて、無遠慮にじろじろと覗き込んだ。
「あ、うん…智くんっていうんだ。」
「ふ〜ん…お友達?…どうぞ、よろしく…さとしくん♪」
俺の『さとしくん』呼びを、少しバカにしたように、ニノは作り笑いを智くんに向けた。
そんなことには気付かない智くんは、嬉しそうに、
「あ、うん…こちらこそ。こういうとこ初めてで…よろしくね」
と、バカ丁寧にあいさつを返した。
雅紀が、甲斐甲斐しく飲み物を用意してくれてる間、ニノは身を乗り出して、智くんに話し掛けた。
「さとしくんはさ~、翔とは?どういうお友達?」
「智くんは…」
「幼馴染だよ」
俺が言うより少し早く、智くんはニノに、嬉しそうに話した。
「おさななじみ~?ふ~ん…」
ニノは一層興味深かそうに、智くんをじろじろ見た。