第20章 君をずっと思ってる
ベランダから、俺たちを送ってくれた電気自動車が走り去るのを見た。
「…潤…ここにいたの?」
「うん…ごめんね、俺何も聞いてなかったけど…」
「俺が聞いてたから、大丈夫だよ…」
「…ありがと…」
柵に両手をついて、外の景色を眺める俺の横に、翔くんが並んだ。
小鳥のさえずりが聞こえる…
木々を渡る風が、頬を撫でていく…
「…翔くん…連れてきてくれて、ありがと…」
「思ったよりも、広かったね~」
「思ってたよりなんてもんじゃないよ!凄いよ~」
「気に入ったなら、よかった…増田にお土産買わなきゃね」
「…なんだか、夢みたいだな…」
「…潤……」
一瞬…
それまで嬉しそうだった潤の横顔が、曇った。
………
……楽しい時間を…
潤と二人っきりで、誰にも邪魔されずに
ゆっくりふたりの時間を過ごしたいって…
そう思って連れ出した
………それって、
もしかしたらこれが最後になるかも…って?
俺の中に、意識していなかったけど、
そんな思いが、あったんじゃないか…?
ゾクリと背筋を冷たいものが走った
俺……
もしかして、俺、潤のこと…
「翔くん…ショッピングセンターに行ってみる~?」
そう言って部屋の中に入ろうとする潤の手首を
掴んで引き寄せた
「しょおくん…」
「潤」
ベランダの入り口、潤を抱き竦めると、
潤はほんの少し身体を硬くした
「…翔くん…誰かに、見られるよ…」
「…いいんだ…見られても…」
人目を気にして、部屋に入ろうとしていた潤も、大人しく俺に身を任せた。
「潤…潤…」
「…翔…くん…」
「愛してる…絶対に離さないから」
「……」
潤に…というよりは、
これは俺の誓いでもあるんだ
自分自身に…
言い聞かせるために。
軋むほどにその背中を抱き締めると、
潤も背中に回した腕に力を込めた
見ていたのは、梢の鳥たちだけだった…