第20章 君をずっと思ってる
広いホテル内を移動するのは、
グリーンの電気自動車。
環境に配慮してなのかな?
凄く静かで、滑るように木立の中を走る。
「紅葉、少し早いみたいですね〜」
気さくに運転者さんに話し掛ける翔くん。
「どこ行きましたか?」
「雲場池です」
「あ〜、そうですね。今年は遅れてるんですよ!いつまでも暑かったから…」
「残念でした〜!また、リベンジしたいです」
「もう少し上に行くと、紅葉してますよ…」
「ほんとですか?詳しく教えてください」
初老のホテルマンは、翔くんに穴場の紅葉スポットを教えている。
………翔くん…
誰とでも直ぐに打ち解ける…
たい焼き屋のおばちゃんが、
『あの子のファンなの』と言った所以は、ここでも発揮されてる。
興味を持ったことは、相手が誰であろうと、とことん追求する姿勢……
それがきっと、相手に好感を抱かせ、
そして、誰もが
翔くんのことを好きになる…
こんな俺が、
翔くんの隣に居られるなんて、
もしかしたら奇跡に近いのかもしれない…
そんな翔くんは……俺のこと……
「潤!何してんだよ〜、着いたぞ」
あ、俺、ぼんやりしてた。
ふたりの荷物を、コテージ内に入れてくれてる初老のホテルマンの隣で、翔くんが微笑んで俺を見ていた。
急いで車を降りて、翔くんの後に続いてコテージに入った。
「わあ~…すげっ、お洒落~…」
「気に入った~?」
「…うん…普通に、家みたい…」
小振りの玄関の先には、中央にソファーがあるリビング、その奥に簡単なキッチンがあった。
………
翔くんが、いろいろ説明を受けている間、
俺は他の部屋のドアを開けてみた。
…ここは、寝室だ…
セミダブルのベッドがふたつ並び、
その脇にも簡単なイスとテーブル…
大きな掃き出しの窓を出ると、
広いウッドデッキ…そこにも、椅子がふたつと
丸いテーブルがあった。
……最高だよ…翔くん…