第20章 君をずっと思ってる
ホテルはまだ早いから、観光していくことに…
「最初に、雲場池、行こうぜ~」
「うん、有名なの?」
「紅葉がさ、マジですげ~綺麗なんだ」
「翔くん行ったことあんの?」
「いや、ネットで観ただけ」
「やっぱな~」
実は今日来るにあたって、結構下調べしてきたんだ。
潤との一泊旅行を楽しい思い出にしたくて…
来てよかった、って潤が思ってくれるように…
雲場池までは少し離れた駐車場に車を止めて歩いた。
本当は手を繋ぎたいけど、結構人も多くて、そうもいかない。
「あ~、ちょっと早かったな~!」
「でも、綺麗じゃん!紅葉じゃなくても…」
池の周りにある木木は、色付き始めたところで、
ネットで観た景色とは違うけど、
場所によってはもみじも赤くなっていたり、
静かな水面に移る景色を眺めながら歩くのも
悪くなかった。
「ホントはさ、周りの紅葉が真っ赤になって、
それが湖に映って、超綺麗なんだよ~!残念…」
「そうなんだ…じゃあ、また来たいな~」
「そうだな。近いもんな!来年にまた来ればいいか~」
「来年…俺、いるのかな?」
「じゅん……」
胸が……
締めつけられた。
不意に潤の口から漏れた、本音…
柵に凭れて湖の景色を見つめたままの潤が
今にも消えてしまいそうで…
「潤」
抱き寄せようと肩に手を掛けたけど、
人気があることに気付いて、思いとどまった。
潤……
お前の不安を、俺には、どうしてやることもできないのか?
ひとりで戦っているお前の心に、
俺は、入りこんで癒すことは出来ないのか?
潤……
…俺は…
「もう行こうか?」
振り返った潤の顔は、意外にも笑ってた
泣いてるかも知れないって、そう思ったのに…
「翔くん…今度はどこ連れてってくれるの?」
「じゅん…」
彼の中で…何かを乗り越えたのか?
それとも…