第20章 君をずっと思ってる
「いってきま~す」
「気を付けてね~!」
母さんに見送られて、お隣の翔くんのうちへ向かうと、もう、車を出して翔くんが待ってた。
「…おはよ~…」
「おお、おはよう!今迎えに行こうと思ってたんだよ」
「迎えにって、隣じゃん…」
「だって、どうせ凄い荷物だと思って」
「翔くんには負けるよ!」
「俺だって、潤には負けるし~!」
どうでもいい事で張り合って、笑い合って、
俺たちは車に乗り込んだ。
翔くんの運転でどこか行くのは初めてじゃないけど、
遠出したことは今までなくて…
少し不安そうに車内を見廻すと、
「なんだよ~、運転が心配なんて訳ないよな~?」
「え?…ああ、いや、心配か、心配じゃないかって言ったら…少し心配かも…」
「はあ~?信用しろって!これでも無事故無違反だぞ」
「だって普段ほとんど運転しないじゃん…」
「大丈夫、の~じょぶ!いざとなったら潤もいるし~♪」
「俺だって、翔くんより、少し上手いくらいだよ~」
「はあ~??言ったな!
その発言、撤回させまーす!!」
あっという間都内を抜け、車は、一路軽井沢へ向け、快調に滑り出した。
翔くん…
言ってるだけじゃなくって、運転、
なんか、上手になったかも……
流れる音楽に、軽くノッてるし。
余裕の顔して、ハンドルを華麗に操る翔くんに……
「…潤、見惚れてるんじゃねぇ〜ぞ♪」
「えっ、み、見惚れてねーし…」
「ふふふ…」
翔くんは、前を見たまま、楽しそうに笑った。
…まあ、見てたけどさ。
だって、
だってさ。
ガッコよすぎるんだもん!
しょうがねえじゃん!!
ドキドキしちゃうの、当たり前じゃん。
「潤、次のサービスエリアで休憩してこうぜ〜♪」
そう言った翔くんは、アクセルを踏み込んだ。
天気予報は、晴れ。
翔くんとふたりの軽井沢旅行…
たくさん楽しみたいな
たくさん……
思い出、作りたい
だって、もしかしたらこれが、
翔くんとの、
最後の……