第20章 君をずっと思ってる
その翌日。朝ご飯を食べていると、
量ったかのようなタイミングで、翔くんから誘いのLINEが…
『今度の週末、軽井沢に行こうぜ
友達が、招待券譲ってくれたんだ』
週末って…明後日じゃん…
そんな急なの翔くんらしくないな~
そう思いながらも、嬉しさに自然と笑みが浮かぶ。
『オッケー!楽しみにしてる』
そうレスすると、ガッツポーズのスタンプが…
その下に『翔』の文字…
こんなの買ったんだ~
自分の名前の入ったスタンプを選んでいる彼を想像し、ニヤニヤが止まらない…
そんな俺を見ていた智が、
「翔くん?」って…
「うん…」
「翔くんにさ、ちゃんとぶつかれよ…絶対受け止めてくれるからさ!」
「…うん…」
そんな事、分かってるよ
そう言いたかったけど、智の真剣な目を見たら、言えなかった。
智は、心配してくれてる…
俺の気持ちが、智には分かってるから…
それに俺が、翔くんの前で本音でぶつかれてない事さえも…智には、分かってるんだ
ずっと一緒にいたんだから…
思えば、いつも側で俺のこと守っていてくれた…
智は俺にとって、紛れもない、
ちゃんと、兄ちゃんだったから。
今までも…
今も…
それなのに、俺…
智に、酷い事ばっかりしてた…
「やだ、まだ食べてたの~?智、今日は早く出るんじゃなかったの~?」
洗濯物を干してきた母さんが、俺と智に声をかけた。
「あ、そうだった!!今日のバイト、早出だった!!」
「ほら~、遅れるとまた叱られるよ!」
母さんに急かされ、智はバタバタと出掛けて行った。
「潤は?」
「俺、授業、午後からだから…」
「そう、じゃあ、美味しいカフェオレ、入れるね~
一緒に飲みましょ♪」
「うん…」
これが、何でもない普通の家庭の朝、なのかな…
キッチンに立つ、母さんの背中を見つめながら、
俺はそう思っていた。