第20章 君をずっと思ってる
今まで、母さんも、翔くんも、東山先生も…
はっきりと明言することを避け、
真綿に包んで触れないようにしていたことを…
この瞬間、智が、あっという間に取り出して
俺の前に突き付けた。
身体が、震えだしそうになるのを、
片方の腕をギュッと掴んで耐えた。
「…いなく、なるって、言ったって…俺の身体は、その…ままだし…それに、Jが…」
「俺は、Jじゃなくて、お前に!潤に残って欲しいんだよ!Jなんか知らないもん!」
智の真っ直ぐな曇りのない瞳が、
俺の心に突き刺さった。
……さとし…おれ…俺は……
「潤、俺にできること、ない?
俺、何だってするから!お前が…潤がそのままの潤でいてくれるんなら、俺…」
「智!分かったから…もう///」
これ以上智の言葉を聞いていたら、泣きだしてしまいそうだから、俺は慌てて遮った。
なのにさ…
……何でお前が、そんな、泣いてんだよ……
智は、大粒の涙をぽろぽろと溢していた。
こころが……
溶けていく……
これ以上傷付かない様にと。
必死で創り上げていた擁壁…でもそれは、砂でできてたんだ…
脆くて…儚い……
「……智…さとし…俺っ…おれさ…」
「潤!!」
智が、俺を抱き締めた。
その温かさに…
力強さに……
涙が、溢れた……
「……兄、ちゃん……」
「潤」
「…俺、いなく、なりたくない…兄ちゃん…
怖い、よ…俺…ずっと、ずっとここ、に、居たい、よ…」
喉が詰まって、声にならない…
「潤、潤…潤っ…」
智の両腕が、しっかりと俺の背中を抱えて、
あり得ない力で抱き締める…
俺よりも、一回り小さい兄の肩に顔を埋めて、
俺は初めて、
泣いた…
胸にしまい込んでいた、ホントの気持ちを
智に
ぶつけた……