第20章 君をずっと思ってる
「はい…」
袋の口を開け、俺の方に差し出した。
「おお。サンキュ♪…あ、あっち///」
少し端っこが焦げた、茶色の魚に口を近付けると、香ばしい小麦と甘いあんこの香りがした
ふたりで、ブランコを少しだけ揺らしながら、懐かしいたい焼きを頬張った。
……風に乗って聞こえてくる街の喧騒と、どこかの家で焼いているのか、さんまのいい匂いが俺たちを包み…
その中でふたり、黙ってたい焼きを食べた。
………
「なあ…潤、お前さ…」
俺は黙って智の方に顔を向けた。
智は、少し眉を下げて、不安げな眼差しで俺を見ていた。
その表情に、兄が、何を言おうとしているのかはっきりと察した俺は、慌てて残りのたい焼きを口に放り込んで立ち上がった。
「おしっ!帰ろうか…」
「潤…お前、いなくなるの?」
……えっ…
固まる俺に、智は、
「母ちゃんがさ…もしかしたらそうなるかも、って…
いなくなるって言っても、本当にいなくなるんじゃなくて、昔の小さい頃の潤に戻るだけだから…って…」
…小さい頃の…俺に…
「俺さ、よく解んないよ~、Jっていうのも、お前で…」
「…智…」
智は目を伏せて、地面の小石を見つめながら続けた。
「俺、気付いてたよ…お前が、夜出掛けてって、別人みたいな恰好で帰って来たりしてたこと…」
「…そっか…」
そりゃ、そうだよな…
同じ家の隣の部屋で、俺の変化に気付かない訳ない…
だからJは、そんなときは家に帰らなくなったのかも…
J…残念ながら、気付かれてたよ…
お前の小細工…
「ねえ、潤!俺は、俺は…
お前がいなくなるなんて、ヤダよ!!」
さとし……
「俺、頭悪り~から、解んね~し、割り切れないよ!潤がJになるだけって、そんなの、全然、解んないよ!!」
智の言葉が、俺の心の一番深いところに
真っ直ぐに突き刺さった。